疫学研究についてⅡ(種類と信頼度)

管理栄養士国家試験で必要な疫学分野の知識として疫学研究は非常に重要な部分です。そこで簡単に紹介したいと思います。


このブログを見るだろう方々はおそらく管理栄養士の勉強をされた方で、今いち疫学がわからない方だと推察いたします。なので、私が勉強して「ここがポイントだという所」をお教えしたいと思います。10分もあれば読めますのでしばしお付き合いください。まずは、お手持ちの教科書の疫学のところを開きながら以下をご覧ください。




まず、覚えなければならなないのは、疫学研究の種類5つ
①無作為抽出比較対照試験(randomized controlled trial)RCT試験とも言う。
②コホート研究
③症例対照研究
④横断研究
⑤生態学研究


これは科学的に信頼性の高い順番で列記してあります。覚え方は頭文字をとって「ムコシヨコセ」と覚えます。意味は特にないのでこのまま覚えた方が楽です。

ちなみに、これは「ゴロで管理栄養士」というコロさんのブログから引用したものです。詳しくはコチラヘhttp://dietitian.blog68.fc2.com/blog-entry-52.html#

なぜ、これを覚えなければならないのかというと、簡単、試験にそのまま出ますよ。信頼性の高いのはどちらか?みたいなの。


次に、ざっくり上にあげた研究がどんなものなのか1つの関係を元に説明します。それはずばり「喫煙と肺がんの関係」です。この2つには密接な関係があることは万民の知るところだと思います。なのでこれを使って①~⑤すべての研究を説明したいと思います。


では信頼度の低い順にどういう研究なのか例をあげます。

生態学研究
「喫煙率が高い国ほど肺がん発生率が高い。」という研究


横断研究
「喫煙者と非喫煙者では喫煙者の方が肺がん患者が多い。」という研究



⑤と④は、「記述疫学」と言い、字のとおり資料から喫煙が肺がんの原因ではないかと仮説を立てる研究のことです。⑤と④の違いは調査対象が「⑤集団」か「④個人」かが、一番のポイントです。あまりに簡単に説明しすぎだ!と言われそうですが、この2つに関してはこの程度の認識で良いと思います。試験にもめったに出ないし、出ても信頼度を比較する問題ぐらいです。




では次、ここからは少しややこしいですが、とても重要ですのでついてきて下さい。

症例対照研究
「肺がん患者群(症例群という)と健康者群(対照群という)を同じ数集め、過去にどの程度喫煙していたかを調べる。結果、症例群の方が喫煙者が多ければ喫煙が肺がんの原因であると推論できる。」という研究。後ろ向き研究とか、患者対照研究ともいう。


コホート研究
「喫煙者群(曝露群)と健康者群(非曝露群)を同じ数集め、両群を数年追跡し、その肺がん罹患率を比較する。結果、曝露群の方が肺がん罹患率が高ければ、喫煙が肺がんの原因であると推論できる。」という研究。前向き研究ともいう。

ここでのポイント、③の症例対照群は読んで字のごとく症例(肺がん)を持った人を対象にします。逆に、②のコホート研究は、症例を持った人は使わず、喫煙をしている人(曝露群)を対象とします。「曝露」とは、ここでは喫煙してその害にさらされること。つまりタバコです。原発の被曝も同じことで、放射能に曝露されているのです。
わたしの中では曝露=タバコで覚えています。この方がとっさの時に思い出しやすいです。

③と②は「分析疫学」といい⑤と④で立てた仮説を「分析」する研究です。横断研究は一時点での結果をもとに調査しますが、③②では時系列が発生します。(過去にさかのぼったり、何年後であったり)なので、横断研究に対して、「縦断研究」という言われ方もします。ちなみに、①も縦断研究です。


最後に

無作為抽出比較対照試験
「対象集団を無作為に二軍に割り振り、片方の群にたばこを吸わせ(曝露群)もうひとつの群(非曝露群)にはなにもしない。その後の肺がん罹患率を比較する。結果、曝露群の方が肺がん罹患率が高ければ、喫煙が肺がんの原因であると推論できる。」という研究。

これは④と⑤で立てた仮説を検証する「介入研究」と呼ばれています。信頼度が一番高い理由は、原因と思われる曝露(喫煙)を患者にさせる所にあります。つまり、健康な人に、たばこを吸ってもらって将来肺がんになる可能性がどの程度あるか調べるわけです。②③④⑤では対象者に一切手を触れていませんが、①だけは手を触れています。つまり「介入」している訳です。


以上をまとめると、症例対照研究では、肺がんにかかった人を集めて今までの喫煙歴を調査しました。②と大きく違うのは、先程も書いたとおり、症例を持った人を使うところ。それに対し、コホート研究では、まだ、肺がんには罹患していないが、肺がんになりそうな人を集めます。症例対照研究で問題になるのは、「過去の話なので、証言が本当かどうかわからない」ということ。ここが、大きなポイントです。コホート研究ではこうしたことはなくなりますが、肺がんになりそうな人を集めているので、往々にして別な要因(肺がんになる)を併せ持つ可能性があります。なので、③よりは信頼度は高まりますが、①よりは信頼度が落ちるのです。



ただし、喫煙と肺がんの関係に限って言えば①の研究は倫理的に不可能な研究と言わざるを得ません。体を悪くする可能性があるものをお願いするのは無理ですよね。なので、①の研究と言うのは原則、動物実験等で人体に有用であると推論できるもののみが許可されるようです。さらに、①の研究の非曝露群には本来、プラセボという偽薬を投与し対象者にどちらを投与したかわからなくする必要があるそうです。さらにさらに、診断者に対しても「どちらに有用な薬を飲ませたかは教えない」というのが原則だそうです。この2つを合わせて二重盲目法と言うそうです。診断者にもその情報を教えないことで、診断者の「この患者は有用な薬を飲ませたから良くなっている」という固定観念(バイアス)を排除できるわけです。結果、喫煙と肺がんの関係を研究する上で一番高度な研究はコホート研究となります。


ここまでくれば、疫学研究の種類と信頼度の順番はわかったのではないでしょうか?一番わかりやすい喫煙と肺がんの関係を使って、すべての研究を行ってみました。

これは、あくまでも私が勉強して試験の問題を解くに必要であると思うところを中心にズラズラと書いたので、ところどころおかしいと思うところがあるかもしれませんが、これをきっかけに疫学が好きになってもらえればと思いながら書きました。
参考にさせていただいたのは、筑波大学大学院人間総合科学研究科の本田 靖先生の「 疫学3:疫学調査の研究デザイン . 日本衛生学雑誌 2008; 63: 746-748」と、大阪大学大学院医学系研究科-老年腎臓内科学-腎臓内科のホームページの「疫学研究デザインの分類」です。(http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/kid/clinicaljournalclub5.html )
ホームページで検索するとどちらも出てきますので興味のある方はそちらをご覧ください。
次回は、「寄与危険・相対危険・オッズ比」を紹介したいと思います。
[PR]

by inufukuken | 2011-08-22 01:58 | 社会と健康(17) | Comments(0)